- 業界
- 製造・販売
- 職種
- 研究開発
- 予測テーマ
- 特性値予測
- 従業員規模
- 1,001名以上
オーラルケア事業、ヘルスケア事業、ビューティーケア事業等を展開するサンスターグループは、ハミガキや洗口液、化粧品といった製品を開発、販売しています。
販売する製品の品質を担保するため、防腐効力(製品に意図せず微生物が混入した際に、製品の腐敗を防ぐ効果)を図る試験を行わなければいけません。試験にかかる時間・労力・費用を削減し効率的に製品開発を行う目的で、処方情報から防腐効力を予測するためにPrediction Oneを導入いただきました。
今回は同社、研究開発推進部 安全性・分析室の渡邊様に伺いました。
私は、研究開発推進部の安全性・分析室という部署に所属をしています。
名前の通り、弊社から販売しているオーラルケア製品やスキンケア製品などの製品について、お客様が安全かつ安心して使用していただけるように設計・評価を行う部署になります。
歯磨剤および洗口液の防腐効力試験結果を予測したいと考えていました。これら製品は、お客様が開封してから使い切る間に、環境中の微生物が混入する機会が生じます。混入した微生物が増殖してしまうと、製品を安全に使用できなくなってしまうので、製品開発の段階で充分な防腐効力があるか確認する必要があります。
この時に行う試験が防腐効力試験であり、開発段階の試作品に微生物を加えて、定期的にその減少度合(微生物が死滅していくか)を観察するといった試験になります。
製品の品質を担保するためには非常に重要な試験ですが、結果が分かるまでに1カ月程の期間がかかり、その間に定期的に菌の数を計測する必要があることから、かなりの時間・労力・費用がかかっていたことが課題でした。そこで、より効率的に製品開発を行うため、AIを使って試験結果を予測できないかと導入を検討していました。
機械学習を用いて業務の効率化・省力化をしていこうという流れは部署全体にあり、また今後の研究開発には必ずAIの力が必要になってくると考えていたため、抵抗感は特にありませんでした。元々は別のツールの導入も検討していましたが、そちらのツールだとパラメーターを自分で設定しなくてはいけない等、データ分析の専門家でなければ難しいと感じる部分がありました。
一方、Prediction Oneは、Webサイトに使い方のマニュアルや導入事例の記事、ウェビナー等が豊富に取り揃えられており、事前に無料体験版も利用することができたため、専門家でなくても扱いやすいことが確認できました。そのため、導入した際のメリットを社内に向けても説明しやすく、スムーズに本導入に進むことができました。
ソフトウェアの使いやすさ、UIの分かりやすさ、どのくらいの予測精度が出るのかは特に気になっていました。また無料体験版を利用する前から、モデル作成に用いる学習データを予め用意していました。
用意した学習データで、充分な予測精度のモデルを作成できるか不安でしたが、幸いにも良好な予測精度のモデルを作成することができたので、データを作り込めばさらに良い結果が出てくるという手応えを得られました。
歯磨剤と洗口液について、防腐効力試験結果を予測するモデルを作成したところ、AUC(※1)は約90%と高い精度結果が出ており、Accuracy(※2)も約90%の結果となるモデルを作成することができました。
説明変数には歯磨剤や洗口液の配合成分とその濃度、目的変数には合格または不合格の2クラスを設定し、二値分類の機能を使って予測しました。防腐効力試験結果を予測するモデルとして非常に良い結果が出たと考えています。
作成したモデルの有効性を検証するために試作検討品による予測精度の検証を行ったところ、計24試験においてすべての試験で予測結果と実際の防腐効力試験の結果が一致しました。これらの結果から、今回作成したモデルを活用して、次のようなフローでの試験が実現できるようになると考えています。
例えば、配合成分・濃度が違う検体を10個用意するとして、それらの検体を実際に試作する前に、その中で何個の検体が試験を合格するかをPrediction Oneで予測します。
予測結果として合格の判定が出たもののみに対して、人の手で試作と防腐効力試験を行います。予測結果から検体に対して「見込みをつける」ことができるので、試験の数を絞ることができるようになります。
まだPrediction Oneの予測結果を最終的な判断材料として活用することはできていませんが、予測精度のレベルの高さに非常に満足しています。また、予測結果として合格したもののみを試作と防腐効力試験を行えばいいので、開発メンバーの負担も軽減できるのではないかと考えています。
これまで多数の検体を試作するために、かなりの労力がかかっていましたが、Prediction Oneによる予測を活用することで相当な工数を削減できるのではと感じています。
データ量に依存する部分もあるかとは思いますが、弊社で検証しているデータ量では数秒で予測結果が出てくるので、非常に速いなと感じています。すぐに結果が出ると説明変数を変えて様々なモデルを試すことができるので、早いスピードでモデルの試行錯誤を繰り返し、様々な視点から検証を行える点が魅力的です。
研究開発の領域でもAIは確実にトレンド化している状況です。「マテリアルズ・インフォマティクス(※3)」といった言葉もあるように、開発の効率化を高める取り組みは業界の中でも非常に注目をされてきています。すでにAIを活用して製品開発や試作制作を行っている方もいらっしゃるかと思いますが、この流れはさらに加速すると感じています。
Prediction Oneは使い勝手が良く、コストパフォーマンスがいい点で、はじめの一歩として活用いただけるサービスではないかと思っています。弊社としては、今回作成したモデルをさらにブラッシュアップしていき、より精度の高い予測に基づく意思決定を行っていければと考えています。
今後も製品の開発段階でAIの活用を進めていくことで、製品開発の迅速化と効率化につなげていきたいと思います。