- 業界
- 医療
- 職種
- その他
- 予測テーマ
- 予後予測
- 従業員規模
- 101~300名
HOME > 導入事例 > 社会医療法人北斗 十勝リハビリテーションセンター
北海道・十勝エリアでリハビリテーションを提供する十勝リハビリテーションセンター。リハビリ業務においてPrediction Oneを導入され、試行錯誤を重ねながら成果を上げられています。
AIとはほど遠いイメージのあるリハビリ業界でのAI活用について、院長の白坂様、リハビリテーション部の小野様に伺いました。
小野様:当センターは回復期リハビリテーション病棟として、「実績指数」というリハビリ効果を示す指標を用いてリハビリの評価・運用をしています。
2004年頃から内部でデータを蓄積していて、2020年頃には各データを統合してデータベース化もしていましたが、指数の改善するためのデータ解析には時間がかかってしまうのでその点について課題として捉えておりました。これらの課題を解決し、患者様に対してより信頼度が高い情報提供をしていきたいと考えていました。
白坂様:たまたま知り合いの医師とディスカッションをする機会があり、日本循環器学会の中で事例として、「手術の予後予測にPrediction Oneを取り入れた」という発表があったと紹介してもらったのがきっかけです。それより以前から、AIを導入して予後予測の精度向上、業務効率化について考えており、別の知り合いの医師と、「まず既製品を使ってみてうまくいかなかったら、自分たちで予後予測のシステムをつくろう」という話しもしていました。
そんな中Prediction Oneを知り、コスパがいいかもしれないと感じたので「使ってみよう」ということになりました。
白坂様:デジタル化、IT化の流れは医療の世界にも来ていて、例えば3Dプリンターで手術のシミュレーションを出す、画像を立体化する眼鏡をかけて模擬的な手術をするといった取り組みも増えています。そのため私自身は導入への不安は全くなく、むしろこれをフックにして、より進めていきたいと考えています。
小野様:現場目線では、我々がAIという専門外のテクノロジーを使いこなせるかどうかはもちろん、一般職員でも活用できる状態まで持っていけるか不安を感じていました。
小野様:毎年行っているデータ解析にかかる業務時間を削減できないかをまず考えていました。また、実績指数の算出については、若手とベテランとの間でばらつきが大きいことや、指導者側に回る職員の業務負荷の軽減なども課題として感じていました。
病院全体の視点では、医療費、経営的な側面でも効果を出すことができるのではないかと考えていて、医療費削減が叫ばれる今の社会事情にも見合う取り組みだと考えていました。
小野様:今回行った予測のテーマは以下の4つです。
小野様:① 自立歩行については、AUC91.7%(※2)。実際の症例での確認では、正解率75.5%でした。
② トイレ動作については、AUC90.5%、F値84.97、実際の患者さんでの予測は正解率91.7%となりました。
③ FIMの数値予測は、決定係数0.85。セラピスト(理学療法士や作業療法士)の予測とAIの予測を比べると、脳卒中の患者様についてはセラピストと同等の予測精度が出ましたので、その結果をもって実用化を進めました。
④ 上肢運動麻痺については、「フーゲルメイヤーアセスメント評価法(※3)」を用いて数値予測モデルを作成し、決定係数は0.8521となりました。モデルに使っていない患者様の結果と、予測モデルで出した数字の誤差は2.3点。従来の方法での誤差は4.2点でしたので、Prediction Oneの方が高い精度となりました。
小野様:試用期間中からある程度高精度は担保できていたのですが、より高めていくために、項目を削減したり他部署からの情報を統合したりしました。またスタートアッププログラムを活用し、助言をいただきながら進めていったことも大きく、データサイエンティストのサポートがなければここまで使いこなすことはできなかったと思います。
小野様:設定したテーマがAIに合うのか合わないのかを考えられるようになりましたし、予測に必要な評価項目やその選定方法も合わせて考えるようになりました。
結果の解釈についてもサポートを受けながら、予測結果の信頼性と解釈方法について十分に理解することができた点が実務運用につながったポイントと考えています。
白坂様:普段他業界の事例を聞く機会はありませんので、様々な事例を紹介していただきながら、具体的に「この場合はここをこうした方がいい」と教えていただけたのは本当にためになりました。
小野様:一般職員から拒絶反応が起こらないか、かなり心配していたのですが、現状では抵抗なく活用できています。「AIでの予測結果はこうだけど担当者としてはこう思っている」「この違いはこう考えてこう生かそう」といった前向きな協議も自然とできていますね。
小野様:非常に簡便に感じております。モデル作成、予測、出力いずれについても操作がわかりやすく、短時間でできてUIもとても見やすかったです。一方でデータを作成するまでの過程と、結果のブラッシュアップ作業についてはまだ迷いながら行っている状況です。
小野様:数値としてはまだ出すことはできませんが、モデルを入れて数秒で結果が出るという点で、時間削減は現時点でも見られています。
白坂様:セラピストは、実際に患者様にリハビリを提供するという業務だけでなく、カルテ記入やドクターへの報告など必要業務が多くあります。
ただ、日中はリハビリ業務に追われ、他の業務は業務時間外になることも多いです。その意味で、業務時間を削減できることは、業務時間の削減は当院だけでなく、業界全体にとっても大きなインパクトを持つと考えています。
小野様:社会問題となっている高齢者の運転に対する可否の予測はPrediction Oneが活躍できる領域のひとつではないかと考えます。また入院日数の予測、患者様の転倒の予測、食事程度の予測などに関しては活用の可能性があると考え、院内でも施策を検討しています。
いずれにおいても結果の判断は、医師などの専門家の判断となりAIはサポート役になりますが、プロセスの業務改善につながればと考えています。
小野様:リハビリテーションとしてできるといいなと考えているのが、リハビリのシミュレーションを仮想空間上で行えるようなサイバーフィジカルシステムの北斗版(当センターの運営主体である社会医療法人北斗)を作成することです。
例えば、いろいろな動作解析のデータを蓄積し予測を立てることで、患者様の将来の状況を視覚的にお見せできるような空間を提供したいと思います。
視覚化されると、後遺症が残る部分がわかったりご家族や周りの方々が早めに気構えできるようになったりとメリットが多いです。サイバー空間やデジタルツインなどの新たなテクノロジーを活用することで、リハビリのシミュレーションをより現実的に行い、患者様やその家族に対して将来の状況を視覚化できる環境を提供したいと考えています。
白坂様:AIによってきちんと評価することがより良いサービスの提供、ひいては患者様の退院にもつながります。また入院当初から退院時のイメージ像が見えることは、患者様のご家族にとっても良いことですよね。
病院の皆様は、何かを取り入れるときにまずはコストパフォーマンスが気にされると思います。その意味でもPrediction Oneは非常に導入しやすいツールです。また精度や使い勝手としても、「予後予測といえばPrediction One」という地位を築けるレベルのツールになりうると考えています。
小野様:現場目線で申し上げるとAI初心者であってもスタートアッププログラムのサポートを受けながら評価業務を実践するだけで良い結果が出ることが十分考えられます。
予測モデル作成に必要なデータ蓄積など大変なところはありますが、当センターの予測モデルも踏まえて情報共有などを進めていきたいと考えています。