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国立がん研究センター
国立がん研究センター
業界
医療
職種
研究開発
予測テーマ
予後予測
従業員規模
1,001名以上

臨床医が取り組むAI活用
~がんの再発率予測で予測精度92%を達成~

国立がん研究センター
国立がん研究センター
業界
医療
職種
研究開発
予測テーマ
予後予測
従業員規模
1,001名以上
  • 課題
    ■ 経験則に基づいた判断から抜け出し、新たな視点を取り入れたい
  • ポイント
    ■ 知名度が高く周囲に導入事例があった
    ■ 簡単に予測分析を行なえる操作性
  • 効果
    ■ 予測モデルの評価指標=92%を実現

「こころとからだにやさしいがん治療の実現」をモットーに、千葉県・柏市で抗がん剤の開発・治療を行なっている国立がん研究センター東病院。抗がん剤の開発技術・治療に高い実績があり、外科領域でも高難度とされる低侵襲手術の導入や、国内で早期に陽子線治療施術を導入するなど、日本を支えるがん治療の拠点となっています。
今回は医療業界におけるAI活用の課題や可能性について、臨床医の藤田様、藤原様にお話を伺いました。

藤田様

▲藤田様

藤原様

▲藤原様

医療業界におけるAI活用と「画像データ」、「数値データ」

はじめに藤田様、藤原様の業務について、院内でのAI活用について教えてください。

私たちは臨床医として週3~4日間は手術対応、手術がない日は患者様の診察や研究を行っています。院内ではAI開発・利用の動きは7,8年前からあり、AIを活用した研究が盛んに行われています。しかし数値データを扱うAIではなく内視鏡画像や放射線画像などの画像データを扱うAIの活用がメインでした。

医療現場でのAI活用にハードルはありましたか。

藤田様:医療現場でAI活用の有無を考える際は「従来の手法の精度を上回れるジャッジメントを即座にできるか」という点が非常に重要になります。特に臨床の現場では総合判断的な判断が必要になってくるため、必ずしもAIが優位であるとは言えない側面もあります。そのため、あくまで補助的なツールのひとつとしてAIが利用されていくことは今後もしばらく変わらないのではないかと考えています。
また、今回のような患者様のデータを活用する予測モデル作成のプロセスにおいては個人情報の取り扱いに細心の注意を払わなくてはいけません。
Excelに手入力でデータを入力せずとも自動処理されることが理想ではありますが、個人情報の保護という観点からもデータ収集、データクレンジングの作業の効率化は法規制などの手続きも含め、まだ先のことになるのではと思っています。

予測精度92%までの道のりとは

予測テーマについて教えてください。

藤原様:手術後における、食道がんの再発率を予測するモデルを作成しています。予後予測に関しては、統計解析・多変量解析を用いた予測モデルがすでに確立している分野なので、「Prediction Oneを活用することで相乗効果が得られるのでは」という期待がありました。
当初は「手術後に合併症が再発するか(=手術を無事に乗り切れるかどうか)」というテーマで試行錯誤していましたが、パラメータが多すぎてうまく結果が出ませんでした。

学習データとデータクレンジングの手法について教えてください。

藤原様:電子カルテの臨床データを見ながら、手打ちでExcelに落とし込んでいます。数値データだけではなく、アウトカム※1も重要な要素となってくるため、電子カルテからデータを抜き出す作業自体が手動クレンジング的な役割を果たしています。
加えて、過去の手術症例のデータベースから説明変数を選ぶ作業も行っており、データクレンジングは実質2段階で行っているということになります。
また実際に活用している説明変数は、下記のような基本的な項目を含めて12,13項目を活用しています。
・説明変数:年齢、性別、術前のがんの進行度、病理検査(顕微鏡検査)の結果 etc

臨床データと手術症例のデータベース上から説明変数を抜き出し学習用データを作成

▲臨床データと手術症例のデータベース上から説明変数を抜き出し学習用データを作成

予測精度についてはいかがでしょうか?

藤原様:予測精度はAUC=0.92ほど出ています。AUC=0.8を超えると有用なモデルとして活用を期待できると伺っていますし、従来の多変量解析では導き出せなかったAUC=0.9という値を達成できた点で、Prediction Oneを活用する意義があるのではないかと考えています。
更なる精度向上には学習データの行数を増やす事が急務ではありますが、全国1~2位の症例数を誇る当院でも年間の手術数は200前後であり、Prediction One活用において推奨されている学習データ数の「1,000行」に届くまではもうしばらく時間がかかりそうです。

一方でモデルの精度改善には「説明変数としてどのような項目を入れるか」が非常に重要であると考えています。
初めは従来の手法である多変量解析で有意だった項目を中心に入れていましたが、それでは従来の手法をAIで代替しただけになってしまうため、「有意そうである」と考えた説明変数を追加し、再度モデルの精度を確認するという手法を取りました。そうすることでこれまで結果に寄与しないであろうと考えていたものが実は重要なファクターになっていたり、その逆も然りと、新しい発見がありました。

モデル精度向上のためのステップ

▲モデル精度向上のためのステップ

Prediction Oneでは各説明変数における寄与度が表示されるため、参考にしながら「寄与度が高いと表示された項目は足す、低く表示された項目は引く」など寄与度の画面を確認しながら試行錯誤を繰り返しています。

はじめはAIを扱うのは専門家のエンジニアであり、医師では難しいのではないかと思っていましたが、データを入れるだけでアルゴリズムの選択や詳細の設定が不要のため簡単に操作できた点も精度向上のために何度もチャレンジしてみようと思った要因のひとつです。

画面イメージ

▲画面イメージ

医師・患者様の判断をサポートする材料に

今後はどのようにPrediction Oneを活用していく予定ですか?

藤田様:まだまだ現場活用には至っていない現状ですが、作成したモデルをもとにして、未来の患者さんの再発率をこれまでの手法よりも正確に予測できる点、結果に寄与するファクターわかる点がPrediction Oneの魅力だと感じています。
今後はがんの早期発見のための活用を目指していくほか、「術後の補助として抗がん剤治療を開始するかどうか」を見極めるための1つの判断材料になればと思っています。
例えば、患者様に「80%の確率で再発します」という数値だけを伝えるのではなく「手術は終わったが何らかの強力な治療を行うことが望ましい」と治療に改めて向き合っていただくための背中を押す材料のひとつとして予測結果を活用していくことが目指すべき場所ではと考えています。

病院の仕事は治療だけではなく、治療後の患者様のQOLを上げるためのサポート機関としても需要なポジションにあります。予測分析が行えるPrediction Oneは退院後の行動科学の分野での活用の可能性もあるのではと考えます。これまで経験則で考えられていた分野でのAIを用いた予測分析の実現はこれから更に広がっていくことを期待しています。

  • ※1 アウトカム
    治療や検査からを行い、その結果を評価して得られる「患者の状態の変化」のこと
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