- 業界
- 製造・販売
- 職種
- マーケティング
- 予測テーマ
- 需要予測
- 従業員規模
- 1,001名以上
ビールをはじめ、著名な酒類ブランドを多く持つキリンビール株式会社。事業計画や販売目標を立てる際に、出荷数の予測は不可欠となります。今回は、Prediction Oneを導入した背景、導入効果や具体的な変数の絞り方などを、マーケティング本部営業部の川合様、乾様に伺いました。
主な業務内容は目標管理業務と需給業務です。目標管理業務とは、全社の販売目標を設定して、その達成に向けて出荷量のモニタリングや予測を行うものです。需給業務とは、全社の営業部門の需給窓口として、安定供給とコスト削減を両立したサプライチェーンを構築する業務となります。また、全国の営業組織のデジタル変革や効率化も行っています。
まず会社として、自社・競合を踏まえた市場の正しい現状把握と、それに基づく戦略策定に課題意識がありました。そこで、全社の事業計画の起点になる出荷予測に改善の余地があると考え、AI活用を検討し始めました。出荷予測業務においては具体的に4つの課題があります。
課題1:業務の属人化です。これまではExcelベースで6人のチームで予測をしていましたが、長く本業務を担当している方が多いため、属人的な部分が多くなっていました。
課題2:予測根拠が不十分であることです。これによって予測後の分析がしづらいところがありました。
課題3:施策が多いブランドでは施策による影響が捉えきれず、予測精度が悪いことが多かったことです。
課題4:予測をつくっても細かく実績の振り返りができていなかったことです。
AIを活用して参考となる数値を出すことで、これらの課題を改善していこうと考えました。
AIの展示会にPrediction Oneが出展されていたとき、ブースに立ち寄ってプレゼンを受けました。導入の決め手は3点あります。1つ目が価格。2つ目は操作がわかりやすく、モデル作成スピードが速いこと。3つ目が、そのスピード感の中で他社製品と変わらない精度があることです。
弊社では、未来の出荷数に対して直近の販売数値が予測結果に寄与していることが多いので、毎回モデルを作り替えています。そうなると、1回当たりのモデル作成時間が短いことが非常に重要です。競合製品だと1時間かかるものも多く、UI面も含めてPrediction Oneに優位性があると思いました。
今はテスト段階で、ビール類で出荷数量の大きい5ブランドに絞り出荷予測をしています。時系列予測などいくつかの方法でトライしてみた結果、現時点では数値予測で分析に取り組んでいます。
説明変数(※1)は18項目ほど使っており、週や曜日、稼働日数などの毎回変更はしない9項目と、毎回変更を加える出荷や施策の9項目に分けました。製品のリニューアルやプロモーション強化の週には施策フラグを立ててわかるようにしています。なるべく全体に影響がある要素に絞って読み込ませ、精度を±5%に収めることが目標です。
<説明変数例>
月末に翌月の月間予測をすると、±5%に収まる場合が多いですが、施策フラグのあるケースではブレが大きくなる傾向があります。実際にある月の実績確定後に、翌月の予測を行ったところ、Prediction Oneの予測と結果とのギャップは各ブランド▲5%~▲10%程度でした。
はい。データについては一元管理されており、抽出は容易に行える環境が整っています。ただ、今回精度を担保できた理由として、データを絞ったことが起因していると考えています。
当初は説明変数が今の3~4倍あり、営業活動のデータを収集したり、POSデータを入れたり、いろいろと試したのですが、寄与度が低いものも多くありました。それなら、労力をかけて集めてくるより、簡単に収集できるデータのみを使った方が早くて精度もそこまで変わらないと分かり、かなり絞ることで簡素化しました。
割と近いと思っています。今、人力でしている予測でも、ブランド別で作ったものを積み上げてカテゴリー分けもしているので、かなり細かい予測にはなっています。
ただ、出荷予測は事業計画へも盛り込む数値となるので、「このくらいまでは頑張りたい」といった意志を込めてプラスしてしまうこともあります。そうなると数字の確からしさが少し弱まってしまうことがあります。
一方、AIは感情を排除して出してくれるので、これはフラットな物差しとしても使えるなと感じています。 今は日次で予測しているのですが、最終的に年間ベースで予測を行いたいと考えています。そのため次のステップとしては、精度の高い年間の出荷予測モデルをつくれるよう、いろいろ試してみようと思っています。
まずは今の5ブランドで年間予測を作り、回してみたいと思います。来年の上半期までの予実の乖離を見て、下半期には他ブランドに広げていくことを検討していきます。
現状の業務でPrediction Oneを使っているのは少人数なので、将来的に使える人間を増やしていければ生産性向上に繋がると考えます。また、全体的にITリテラシーは上げていかなければならないと思っています。社内でDXを推進していこうという動きがありますので、Prediction Oneをはじめ、他のデジタルツールをみんなが使えるようになれば良いなと思います。