1.2 予測分析で解きたい課題を設定する

予測分析では一項目を「予測したい項目(目的変数)」とし、それ以外の項目を「その予測したい項目を予測するに際して参考になる情報(説明変数)」とします。このとき、予測対象は、予測結果をどのように使うのかをイメージできるものを選びます。予測結果をもとに実際にビジネスアクションが起こせない場合、予測対象の設定が間違っている可能性があります。(予測結果を活用したいのではなく寄与度を活用したい場合はこの限りではありません)。
データ・予測結果/寄与度・ビジネスアクションがご自身の場合では何なのかということを考え、課題を設定していきます。

タスク

  • 1.2.1 予測結果/寄与度を活用したビジネスアクションを考える
  • 1.2.2 項目の中でどれを予測対象にするか決める
  • 1.2.3 予測モデルの精度目標を明文化する

1.2.1 予測結果/寄与度を活用したビジネスアクションを考える

どんなデータを使ってどんな予測結果/寄与度を出したいのか、その予測結果/寄与度を利用してどんなビジネスアクションを実行したいのか、これに答えられないと予測分析を活用することは難しいです。
データ・予測結果/寄与度・ビジネスアクションについて、ご自身の場合ではどうなるかを以下のテンプレートを参考に考えましょう。


例えば、マーケティングの例で考えてみます。この場合、データは入会日、過去購入額、会員種別、…などの顧客に関するデータです。予測結果は成約するかどうかです。そして、予測結果に基づき、成約の可能性がある顧客だけにダイレクトメールを郵送する、ということがビジネスアクションになります。


他にも不動産営業の例も見てみましょう。この場合、データは建物面積、築年数、所在地、…などの物件に関するデータです。予測結果は物件の価格です。そして、予測結果に基づき、来店顧客に対して物件の即時査定の提供をする、ということがビジネスアクションになります。


必ずしも予測結果からビジネスアクションを起こす必要はありません。Prediction Oneでは予測モデルを作成した際に寄与度が算出されます。この寄与度を用いたアクションを目標とすることも予測分析ではよくあります。寄与度の詳細については「予測寄与度の概要」をご覧ください。
寄与度からビジネスアクションを起こす例として、生産ラインの例を見てみましょう。この場合、データは機器Aの温度、機器Bの回転数、機器C通過後の湿度、…などの生産ライン中の各種センサーデータです。寄与度は製品不良の原因候補です。寄与度が高い項目は製品の正常/不良を予測するにあたって重要だった項目、つまり不良の原因になっている可能性がある項目なので、寄与度が高い項目に関して点検を行う、ということがビジネスアクションになります。


データ、予測結果/寄与度、ビジネスアクションがご自身の場合どういったものを設定できるのかを考えてみましょう。

1.2.2 項目の中でどれを予測対象にするか決める

データ・予測結果/寄与度・ビジネスアクションが決めたら、改めて何を予測対象として予測モデルを作成するのか整理しましょう。その予測対象について、予測タイプが「二値分類」「多値分類」「数値予測」「時系列予測」で表現できるものでないとPrediction Oneで予測モデルは作成できません(予測分析の対象外になります)。ご自身の考える予測対象で予測モデルを作成したとき、予測タイプがこれのうちどれに当たるのか考えましょう。問題なくこれらに該当する場合はそれを予測対象とします。

予測分析の対象外となる例
データとして過去の問い合わせとオペレータ応答文章のペア、予測結果として適切な応答、ビジネスアクションとしてFAQの作成を設定したとします。この場合、予測対象である「オペレータ応答文章」の予測は二値分類、多値分類、数値予測、時系列予測のどの予測タイプにも該当しないため、予測モデルの作成はできません。
課題はビジネスアクションが取れ、かつ予測分析で扱えるものを設定する必要があります。例えば、お問い合わせを複数の担当者に分類することで業務の効率化が図れるような場合は、多値分類に該当するので予測分析で扱えるようになります。

予測分析の基礎知識教師あり学習の予測タイプ

予測タイプが決まったらぜひ一度自分の予測タイプの予測モデルをチュートリアルで作成してみてください(近い業界でなくてもOK)。ご自身のケースで予測モデルを作成していくイメージがつかめるはずです。

予測タイプごとのチュートリアル
予測タイプ チュートリアル
二値分類 クレジットカード不正取引検知
DMへの反応予測
顧客行動予測に基づいたターゲティング
退会予測による退会の削減
成約予測による有望顧客絞り込み
機器の故障予測による故障の未然防止
行動予測による施策の効率化
貸し倒れ予測による査定の効率化
多値分類 故障情報の自動分類
顧客の声のラベリング自動化
数値予測 入電予測によるオペレータ人数決定
特性予測による開発の効率化
新商品の需要予測
成約価格の予測
時系列予測 来店数予測による仕入れ量決定
出荷数予測による生産計画の精度向上
販売台数予測による製造計画の改善
注文数予測による過剰在庫と欠品の防止

1.2.3 予測モデルの精度目標を明文化する

予測モデルの精度目標をあらかじめ決めておくことも重要です。これはビジネス上の目標と似ていますがやや異なります。ここで決める目標とは「ビジネス上の目標を達成するために予測モデルにはどの程度の予測精度が求められるのかを考えその精度を目標に据える」というものです。

マーケティングの例で考えてみます。ビジネス上の目標として契約更新数を昨年度より100件増やすというものがあったとします。年間を通して様々な施策を行う中でダイレクトメール経由の契約更新数は昨年度より40件増えるとビジネスの目標達成に近づきそうです。毎年ダイレクトメールは抽出した顧客500人に送っており、去年はダイレクトメール経由で310人が契約更新しました。今年度40件契約更新を増やすためにはダイレクトメールを送る500人の顧客のうち350人が契約更新する必要があります。すると、求められる予測モデルの精度は「契約更新と予測した顧客のうち70%が契約更新する」となり、これが予測モデルの精度目標となります。
さらに詳しく考えると「契約更新と予測した顧客全体のうち70%が契約更新する」必要がないことが分かります。なぜならばダイレクトメールは500人の顧客にしか送らないからです。そうすると目標は「契約更新と予測した顧客から抽出した500人のうち70%が契約更新する」と書き換えられます。しかし、契約更新と予測した顧客からランダムに500人抽出するのはもったいないです。二値分類では予測モデルはどちらになる確率がどの程度か?という値を出力するため、契約更新となる確率が高い順に送ったほうがよさそうです。つまり目標は「契約更新の予測確率が高い上位500人の顧客のうち70%が契約更新する」となり、評価用データに対する予測で「契約更新の予測確率が高い上位500人の顧客のうち70%が契約更新する」というのが予測モデルの精度目標になります。
(評価用データに関して詳しくは、「予測分析の基礎知識機械学習の3ステップ」をご覧ください。)

二値分類では予測モデルはどちらになる確率がどの程度か?という値を出力します。詳しくは二値分類のチュートリアル(例えば「顧客行動予測に基づいたターゲティング」)をご確認ください。

これらを踏まえ、ご自身のケースでビジネス上の目標を達成するためには、予測モデルにどの程度の精度が求められるのか考えましょう。Prediction Oneでは自動で評価値を計算して表示されますが上記のマーケティングの例のように個々のケースによっては表示されている精度をそのまま目標値とするのが適していない場合もあります。Prediction Oneに表示される精度の種類にとらわれず、ご自身のケースでどの程度の精度が求められるのか考える必要があります。
予測結果を個人で利用するのではなくチームで利用するということも予測分析ではよくあります。この場合、ビジネス上の目標や予測モデルの精度目標について事前にコンセンサスを取っておくことも重要です。目標の設定に際しチームで議論をすることが必要な場合もあります。

なお、寄与度を活用する場合の精度目標は、Prediction Oneの場合、予測モデルのサマリタブに表示される予測精度レベルで星3~4程度に設定しましょう。予測モデルの精度が高いほど寄与度は信頼性の高いものになり、一方で予測モデルの精度が低いほど寄与度は信頼できなくなります。予測を用いない場合は精度目標は必要ないように思えるかもしれませんが、信頼性の高い寄与度からビジネスアクションを起こすためには予測モデルの精度は高い方が良いです。

その他の課題を設定する際の注意点
予測分析は表形式データを対象とした機械学習技術です。ご自身が用意できるデータが表形式で表すことができるものなのか確認しましょう。

予測分析の基礎知識機械学習とは
予測分析の基礎知識データとは


まとめ

以下はこのページで行うべきタスクの再掲です。これらのタスクが終わったら次へ進みましょう。

  • 1.2.1 予測結果/寄与度を活用したビジネスアクションを考える
  • 1.2.2 項目の中でどれを予測対象にするか決める
  • 1.2.3 予測モデルの精度目標を明文化する

次のステップ:「1.3 予測分析で得られた効果を測定できるようにする」
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