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出荷予測や来店予測などさまざまなテーマでAI活用。
分析業務を活発化させる土壌作りとは?

株式会社ワークマン

設  立:1979年11月30日

従業員数:349名(2022年3月末現在)

事業内容:作業服、作業関連用品およびアウトドア・スポーツウェアを販売する専門店のチェーン展開

導入目的業務効率の向上
  • 導入前の課題

    ① ピッキング数予測(出荷予測)の高精度化
    ② 店舗での無駄のない人員配置とコストの最適化
    ③ 売上を最大化

  • 導入のポイント

    ① 分析するときにモデルを選ばなくていい
    ② 小難しくなく、専門外の人も含めてデータ分析について議論ができる

  • 導入効果

    ① 出荷予測:精度レベル0.87
    ② 店舗への来店数予測:誤差中央値7.46%
    ③ KPI設定:売上に寄与するKPIを明確化

工場や現場作業向けの作業服・関連用品の日本最大手である株式会社ワークマンでは、データに基づき、現場の社員自らが考え業務改革を推進する「ボトムアップなデータドリブン経営」と「草の根DX」を実現しています。
Prediction One導入から一定期間を経て、現在取り組まれているテーマについてデータ戦略部の長谷川様に伺いました。

※導入背景に関する記事はこちらをご覧ください。
https://predictionone.sony.biz/case/09workman/

① ピッキング数予測(出荷予測)

ピッキング数の予測に取り組まれた背景は何でしょうか?

まずは、社内で行っているDC(Distribution Centerの略で物流センターの種類の1つ)の出荷予測の精度をさらに高める必要がありました。急にピッキング数、つまり出荷数が上がると、それに対応する従業員が足りなくなります。その際、緊急で派遣スタッフを外部に依頼して増員させるのですが、コストが割高になってしまいます。そのため、できるだけ自社で採用している従業員でピッキング業務を行えるよう出荷予測精度を上げることがミッションとなっていました。

実際に、機械学習のデータセットとして前年出荷実績や前年比、曜日、気温、店休日などの情報をPrediction Oneに入れて予測しました。結果として、予測精度レベルが0.87と高い結果となっています。全体の予測精度はいいのですが、精度の高い日と低い日のばらつきが大きいため、このあたりの改善に現状取り組んでおります。

<データセット例>

前年出荷実績 / 前年比 / 曜日/ 最低気温 / 最高気温 / 平均気温 / 店休日

誤差を小さくしていく取り組みは、どのようなことをされているのでしょうか?

これまでは時系列予測ではなかったので、時系列予測にした方がいいのではないかという仮説を持っています。あとは変数を増やしたり減らしたりして試していくしかないと思います。現状使われていない、ピッキング数の増減に寄与しそうな要素があれば変数として組み入れながら精度を向上させる想定です。

② 来店数予測

AIで予測を取り入れようとされた経緯を教えてください。

弊社では、女性向けアウトドアショップの「ワークマン女子」を展開しており、従来のプロ作業員向けである「ワークマン」と比べて売上を大きく上回る勢いとなっています。

「ワークマン女子」はフランチャイズ展開ではなく、運営代行の方に委託して営業しています。ショッピングセンターやデパートへの出店が多く、そのため売り場面積が狭く、多くの商品を陳列できない傾向にあります。しかし、お客様の来店数が急増しているため、売れるスピードがとても早く、商品がすぐに棚からなくなってしまいます。

一方で、人件費を考慮して、基本的に人員はミニマムで設定しているので、商品が売り場に足りなくなりやすい状態です。そうなると店舗スタッフは、レジ打ちとお客様対応がメインの仕事になってしまい、品出しをするタイミングが作りづらい状況です。これでは当然お客様にも迷惑がかかりますし、売上の機会ロスにもなると考えています。

そのため「ワークマン女子」における来店数予測に取り組むことで、無駄のない人員配置とコストの最適化を実現しようと分析を開始しました。

Prediction Oneでの予測状況はいかがでしょうか?

まず、東京地区に絞って広範囲の来店数予測をしています。変数は年月日をはじめ、最高・最低気温、降水量、風速などとし、時系列予測を適用しました。
結果は誤差中央値が7.46%と、まずまずの予測精度が出ています。この精度であれば店舗毎の予測にも使えそうだということで、これから取り組んでみようと思っています。

<データセット例>

年月日 / 最高気温 / 最低気温 / 降水量の合計 / 平均風速 / 最大風速 / 平均温度 / 天気

変数は、試行錯誤する中で今のデータセットに落ち着いたのでしょうか?

最初から利用している変数で予測したところ、当てはまりが良かったのでそのまま運用しています。例えば天気については、雨が3、くもりが2、晴れが1というフラグを立てて実施しています。通常の「ワークマン」は、雨の日が売上は上がる特徴がありますが、「ワークマン女子」は晴れの方が上がるという違いがありますね。

今後は「ワークマン」の方でも展開していく構想はありますか?

基本的に運営代行のお店に予測を取り入れようと考えているので、SC(ショッピングセンター)店である「ワークマン女子」やアウトドアやスポーツ向けの「ワークマンプラス」中心の展開を想定しています。

③ KPI設定

KPI設定への活用についてもお伺いできますでしょうか?

一言で言うと、需要予測発注システムの精度を上げるためにPrediction Oneを使わせていただきました。店舗で活用しているシステムは、履歴発注システムと需要予測発注システムという2種類があります。

履歴発注システムはセルワンバイワンで動くシステムです。セルワンバイワンとは「1個売れたら1個、2個売れたら2個発注する」という過去の実績を基にした仕組みです。需要予測発注は、例えばこれから需要が上がってくると予測されるときには「1個売れたら2個発注」という選択ができるものとなっています。

取り組みのスタート時は履歴発注が239店舗、需要予測発注が445店舗で活用されておりました。その中で、履歴発注店舗の売上伸長率よりも、需要予測発注店舗の売上伸長率は2%ほど高くなっているので、「需要予測発注システムの精度を上げていこう」と考えました。

「需要予測発注システムを活用して、売上を最大化していくために、どんなKPIを設定すると良いか」。これを突き止めるためにいろいろな変数を入れて分析してみました。

実際の精度はいかがでしたか?

需要予測発注と履歴発注の二値分類をし、分類精度(AUC)が91%と非常に高い値になりました。そのため、そこに寄与した変数を需要予測のKPIとして使えるのではないかと考えています。
売上に寄与した変数には例えば、年間棚割導入率や、年間H(ヘッド)率。年間棚割外在庫率などがありました。これらの上位変数をKPIとして今後管理していこうと取り組んでいます。

社内から面白い活用方法が生まれてきた

見える化までの部分であれば、他社製の統計解析ツールも選択肢に入ると思いますが、Prediction Oneを使用されてみて長所だと感じられた点はありましたか?

分析するときにモデルを選ばなくていいところですね。統計解析ソフトだと、モデルを選ばないといけないので、その必要がないところはありがたかったです。

また、弊社では「データ分析の民主化」を掲げており、誰でもデータを見て分析できるようにしたいと考えています。その点Prediction Oneは小難しいところがなく、「この説明変数が効いている・効いていない」ということをパッと見て誰もが把握できる。そのお陰で、専門外の人も含めて議論できる土壌をつくることができていると思います。

1年間使われてみて、変わった部分はありますか?

弊社内でPrediction Oneの発表会をしているのですが、僕が想定していなかった使い方をする方がいて面白いですね。

例えば、EC事業部の人が、顧客注文データを使って売上予測を立てました。具体的には、ECで注文して、店舗に受け取りに行く人が多い区があることがわかってきたのです。そうなると、「その区にハブ店舗を作るといいのではないか」といった新しいアイデアのきっかけになります。

社内で発表会があることによって「使わなきゃ」と思い、結果として面白い分析をしてくる人が現れるのです。今後もそういったイベントを社内行事として組み込んでいこうと思っています。

最後に、今後の展望をお聞かせいただけますでしょうか?

ピッキング数予測と来店数予測はまだ完結していないので、精度向上に向けてもう少し進めたいと思います。また、社内にデータサイエンティストもいますが、Prediction Oneを使える方はデータサイエンティストと比べるとまだまだ少数なので、積極的に社内講習会などを行い、使える人を増やしていく予定です。

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